倣 唐獅子図屏風

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倣 唐獅子図屏風

今度、大阪 高石市の小林美術館で私が再現した「倣 唐獅子図」が2020年12月18日から2021年3月14日まで特別公開されます。

 現在、東京で開催されている「桃山ー天下人の100年」展に展示中の御物「唐獅子図屏風」の再現模写です。

 現状を模写したレプリカではなく、描かれた当時の制作工程を現代の絵描きが勉強のために新作として描き直す再現模写です。

 これほど謎の多い時代を代表する名作は、ないと思います。

 この作品の謎については、ここでは語りつくせませんが、再現するにあたり知っておかなければならない前提がありました。

 まず、展覧会でも現物が見れますので観察すればわかりますが、この作品には失敗や修正の跡が沢山みれます。

 当時の狩野派は、狩野永徳というプロジェクトリーダーの下、数人の絵師が分担して描いていました。

 そして、羽柴秀吉が中国攻めの折に毛利方に講和の印として送られ、江戸時代に毛利家代々の伝えられた、と、現在では賛否両論ありますが伝えられています。

 さらに左隻には子供の唐獅子が描かれていたと、伝えられ、実際に永徳の曾孫にあたる狩野常信が補作を描いているが、大きさも右隻からの構図のつながりもなく唐突な屏風になっている。などが、あります。

 

 レプリカ制作とは異なり再現模写は、技術的再現もさることながら、オリジナル作家の精神的、肉体的なスピリットさえも理解しようと努めます。倣いですから原作者とのペーシングが重要です。生きた線や彩色を目指します。

 

 実際に、永徳工房には珍しく修正箇所があらわにらるほど大急ぎの仕事振りから推察して、よほどの優れた絵師が一週間前後で大慌てで制作したと考えましたので、私自身一人の作業で再現を試みますので、20日から30日で仕上げる事を念頭におきました。昼間の仕事もありますので盆休みを利用した夏に試みました。

 

 ほとんど睡眠時間を削りながらの制作でしたが、模写した人には分かると思いますが、再現模写は模写した絵描きにしかわからない事、発見が幾つもありました。